会社を辞めたあと、ようやく自由になれると思っていた。
あの生産性のない業務、意味のない会議、理不尽な上司の顔──すべてから解放されて。
「これでやっと、少しは自分のペースで生きられる」──そんな風に考えていた。
けれど、その平穏はたった一枚の封筒によって、あっさりと壊された。
「え、まだ請求くるの?」──退職後に届いた税金の現実
退職して2ヶ月ほど経ったころ、自宅に住民税の納税通知書が届いた。
開いてみた瞬間、目が点になった。
「15万超えてる……?」
いやいや、もう会社辞めてるんですけど? 無職なんですけど?
でもそんな言い訳は、税務署には一切通じない。
住民税は「前年の所得」に対して課税される。
つまり今、収入がゼロでも、“去年働いた分”の請求が今くるということ。
会社員のときは、毎月の給料から勝手に引かれていた税金。
それを自分で支払うようになると、その重さがドスンと心にのしかかってくる。
地味に効く、国民健康保険の“ダメージ”
さらに追い打ちをかけてきたのが、国民健康保険だった。
会社を辞めた瞬間、厚生年金と健康保険から外れる。
その代わり、自分で「国民年金」「国民健康保険」に加入する必要がある。
市役所に出向き、手続きを済ませた数日後──
今度はまた別の請求書が届いた。
月2万円以上。年間で約28万円。
しかも、これも「前年の年収」が基準。
年収450万円だった自分は、今は働いていないのに、過去の収入をもとに高額請求されるという、なんとも理不尽なシステムだった。
年収450万円の退職後、実際に払った税金一覧
ざっくりまとめると、こんな感じだった:
項目 | 金額 |
---|---|
住民税(年額) | 約16万円 |
国民健康保険(年額) | 約28万円 |
合計 | 約44万円 |
しかもこれ、「ちゃんと手続きしていればもっと安くなったらしい」と後から知り、二度落ち込んだ。
「知らなかった」は通用しない。辞める前に知っておくべきこと
● 住民税は会社に“前払い”させることができる
退職前に「住民税を最終給与で一括徴収してください」と申請すれば、あとからのドカンとした請求を回避できる。
ただし、最終月の給料が少ないと、全額は引けず、残りが後日請求されることも。
● 国民健康保険は“減免申請”できる
収入が大幅に減る見込みがある人は、市役所で**「保険料の減免申請」**が可能。
適用されれば、保険料が半額以下になることもある。
自分はこれを知らずにフルで支払ってしまった。完全に損した。
● 離職理由が「会社都合」だと、さらに有利
離職票に「会社都合退職」と記載されていれば、失業保険の給付開始が早まり、保険料の減免も受けやすい。
自分は「自己都合退職」だったため、支援もすべてワンテンポ遅れ。
退職理由の区分は、軽視しないほうがいい。
お金はあった。けれど、自由は感じなかった
退職前、1〜2年は働かなくても生活できる程度の貯金はあった。
安心できるはずだった。
でも実際には、通帳の残高が毎月少しずつ減っていくことのストレスが、想像以上に大きかった。
働いていないのに、税金と保険料で毎月数万円が勝手に出ていく。
ストレスから解放されたはずなのに、心はなぜか落ち着かない。
むしろ、会社にいたときよりも「このままでいいのか」と不安になる時間が増えた。
結論:退職は“自由”じゃない、“すべてを自分で背負う”ということ
会社を辞めれば自由になれる。
──それは確かに、半分は本当だ。
でももう半分は、
「会社という“守り”を手放す」ということでもある。
会社員時代は、社会保険も税金もすべて“天引き”でやってくれていた。
自分でやってみて初めて気づく。
あれは、かなりありがたい仕組みだったんだ。
税金を自分で払いに行くと、身体ではなく**“感情”が痛む**。
「痛税感」とでも呼ぶべきなのか──そんなものを、身をもって知った。
最後に
「今の職場がつらい」
「自由になりたい」
そう思って退職を考えている人も多いだろう。
でも、辞めたあとの“納付額”を知らずに辞めると、精神的にやられる。
退職は悪じゃない。むしろ、自分の心と身体を守るための選択として正しい。
だけど――
退職は「自由のスタート」じゃなくて「自立のスタート」だ。
辞めたあと、何にどれだけかかるのか。
せめてそこだけは、事前に知っておいてほしい。
会社を辞めても、税金は辞めさせてくれない。
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