「環境を変えれば人生が変わる」と信じているバカたれどもへ

「自分を変えたければ、環境を変えろ」
そんなキャッチーな言葉を、自己啓発界隈では嫌というほど耳にする。

果たして、本当にそうだろうか。
正直、私は一概にそうとは思っていない。

元日本代表の本田圭佑選手は「環境にこだわれ」と語っている。
この言葉自体は、間違っていない。

確かに、人は置かれる環境によってパフォーマンスが変わる。
良い環境に身を置けば、本来の力を発揮しやすくなり、才能が伸びることもある。
これは事実だし、私自身もそう思っている。

ただし――
「環境を変えろ」と
「環境にこだわれ」は、まったく別物だ。

にもかかわらず、多くの人はこの二つを都合よく混同する。
そしてこう考える。

「場所を変えれば、何かが変わるはずだ」
「新しい環境なら、今度こそうまくやれるはずだ」と。

だが現実は、そんなに甘くない。
環境だけを変えても、自分のマインドや行動が変わらなければ、
人は同じ失敗を、場所を変えて繰り返すだけだ。

私はこれまでの人生で、
「新天地に行けば自分は変われる」と信じた人間を、何人も見てきた。
そしてその多くが、同じところでつまずいている。

ここから話すのは、その中の一人の話だ。

新天地で自分を変えようとしたバカたれ

この話は、私が某有名メーカーの自動車生産工場に勤めていた頃の話だ。
その会社は、九州に新しい工場を立ち上げようとしていた。

工場の立ち上げには、現場の人間と技術部門から選抜された
いわゆる「立ち上げ部隊」が先に現地へ向かう。

設備のレイアウトを決めたり、生産ラインの土台を作ったりする。
地味だが、かなり重要な仕事だ。

その部隊の中に、例のバカたれがいた。
さすがに「バカたれ」と呼ぶのも失礼なので、仮にAさんと呼ぼう。

Aさんは、私の5つ上の先輩だった。
年上だろうが関係なく、言いたいことははっきり言うタイプ。

初めて会ったときの印象は、
「この人、結構イケイケだな。仕事できそうだな」
そんな感じだった。

立ち上げメンバーで懇親会を開いたとき、Aさんからこんな話を聞いた。

前の職場では、あまり業績が振るわなかった。
だからこそ、この九州の新工場で頑張って、
しっかり結果を残したいと思っている——。

力強く、そう語っていたのを覚えている。

実際、当時のAさんはかなり張り切っていたと思う。
新しい工場。新しい環境。選抜されたメンバー。

「ここで一発、自分を変えてやろう」

そんな空気を、全身から漂わせていた。

――この時点では、まだ誰も気づいていなかった。
この人が、なぜ“バカたれ”と呼ばれることになるのかを。

結局、自分を変われなかったバカたれ

それから一年後、計画通りに新工場は立ち上がった。
通常業務へ移行することになり、立ち上げ部隊は解散。
メンバーはそれぞれ、別々の配置へと戻っていった。

私はAさんと同じ班になった。

Aさんは立ち上げ時の功績が評価され、
班のナンバー2の役職に就くことになった。

一般的な会社で言えば「主任」や「班長補佐」といった立場だ。
うちの会社では、若手で仕事ができる人間が任されるポジションでもある。

そんなある日、Aさんと上司が揉めていた。

話を聞くと、
「急ぎで提出しなければならない資料の作成」を指示したにもかかわらず、
Aさんはその仕事をやっていなかったらしい。

しかも、今回が初めてではない。
同じようなことを、何度も繰り返していたという。

「言われたことをやらずに、何してたんだ」

上司にそう詰められると、Aさんはこう答えた。

二週間後に行われる棚卸しのための、
リスト作成をしていました、と。

おそらく、この話を聞いた多くの人は、こう思うだろう。
「なんで今、それをやるんだ?」
「優先順位、完全に違うだろ」と。

私は思わず、Aさんにこう言ってしまった。

「優先順位が高い仕事くらい、わかるでしょう。
 何やってるんですか」

するとAさんは、少し語気を強めて言い返してきた。

「そんなの、わかってるよ‼️」

半ギレ、という表現が一番しっくりくる反応だった。

この件をきっかけに、
私はAさんに対して、はっきりとした疑問を抱くようになった。

後日、もともとAさんと同じ職場だった人と話す機会があり、
それとなくAさんのことを聞いてみた。

上司と揉めた件を話すと、その人は苦笑いしながらこう言った。

「……あー、やっぱり相変わらず変わってないな」
「九州に行って、前とは変わったって聞いてたんだけどさ」
「結局、化けの皮が剥がれてきたって感じだな」

その日を境に、
Aさんに対する周囲の評価は、
少しずつ、しかし確実に下がっていった。

勘違いしたバカたれどもに言えること

この話を聞いて、どう思っただろうか。

「環境だけを変えても、結局は元の自分に戻る」
そう感じた人も多いのではないだろうか。

まあ、当然といえば当然だ。
長年かけて積み重ねてきた習慣やマインドは、
そう簡単に書き換えられるものではない。

多くの人が勘違いしているのは、
環境が変われば、自分も魔法のように変われると思ってしまうことだ。

それは、
「都会に上京すれば、漫画やドラマみたいなキラキラした毎日が待っている」
そう思い込むのと、あまり変わらない。

場所が変わっても、
考え方が同じなら、選ぶ行動もほとんど変わらない。

人間の思想や行動パターンは、
物理的に不可能な制限でもない限り、
どこへ行こうと、驚くほど変わらないものだ。

これは、私自身も同じ経験をしてきたからこそ、はっきり言える。

じゃあ、どうすればよかったのか。

答えはシンプルで、そして厳しい。

変えるべきだったのは、環境ではなく、自分自身のマインド

ここで言いたいのは、
「早寝早起きをしろ」とか
「運動を習慣にしろ」といった、
よくある自己啓発本に書いてあるような話ではない。

それらが無意味だと言いたいわけでもない。
ただ、それは表面の行動に過ぎない、というだけだ。

本当に変えるべきだったのは、
行動の“中身”ではなく、
その行動を選んでいる自分の思考そのものだった。

これから挙げることは、
頭の中で考えるだけでもいい。
ただ、できれば紙に書いて、言語化することを強く勧めたい。

まず一つ目。

「この行動をやらなかったら、未来はどうなるか」
を、あえて考えること。

今やっている行動を続けた先に、
どんな未来が待っているのか。
逆に、やらなかった場合、
何が失われていくのか。

次に二つ目。

「なぜ、自分はこの行動を選んだのか」
を、自分に問い直すこと。

楽だからなのか。
評価されたいからなのか。
それとも、考えなくて済むからなのか。

この問いに答えられない行動は、
たいてい、あとで同じ失敗を繰り返す。

最後に三つ目

「自分が選択した行動に、どんな結果がついてくるのか」

これは、未来の話をしているようで、
実は「今の自分の覚悟」を問う質問だ。

この行動を続けた先に、
信頼は積み上がるのか。
それとも、少しずつ削れていくのか。

評価は上がるのか。
それとも、静かに下がっていくのか。

多くの場合、結果はすぐには出ない。
だから人は、なかったことにしてしまう。

でも現実は、ちゃんと帳尻を合わせてくる。

今日の小さな選択は、
一年後、確実に「結果」として姿を現す。

最後に一言

結局、自分を変えられなかったバカたれとは、
環境のせいにして、
自分の選択と向き合わなかった人間のことだった。

そして、これはAさんだけの話じゃない。
かつての私自身の話でもある。

環境を変えれば、何かが変わると思っていた。
場所を移せば、人生も動き出すと信じていた。

でも、本当に変わるかどうかを決めているのは、
毎日の小さな選択と、
それに向き合う覚悟だけだった。

もし今、
「環境を変えたい」と思っているなら、
その前に一度だけ、自分に問いかけてみてほしい。

その選択の責任を、ちゃんと自分で引き受ける覚悟はあるか。

それができたとき、
ようやく人は、少しずつ変わり始める。

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